冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 話しかければ返事をしてくれるのに、心の距離は遠い。

 あの頃の自分はいないと、彼は言っていた。

 その言葉の通り、かつての藍斗さんなら『泣かせたい』『壊したい』なんて言わなかったはずだ。

 優しくしてほしいと言ったら、仕方がないなと穏やかに笑って、そんなに優しく焦らさないでくれと懇願するまで私を甘やかしてくれた。

 物騒な想いを告げられても、怖いというより戸惑いのほうが大きい。

 私に優しくできないのは、どういう感情からくるものなのだろう。

 逆に、私に優しくしていた時はどんな感情が根本にあったのだろう。

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