冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 不思議と、苦々しげに吐き出された今回のほうが彼の心の深い場所に近い気がした。

 身じろぎをし、身体を折りたたんで目を閉じる。

 あのキスの意味は?

 止められるわけがないと言ったのはなぜ?

 あれではまるで――私に恋い焦がれているようではないか。

「……藍斗さん」

 呼んでみるけれど返事はない。もう眠ったのかもしれなかった。

 どうして私にキスをしたの。

 どうして一緒に旅行しようと思ったの。

 どうして私をめちゃくちゃに抱きたいと言ったの。

 聞きたいことはひとつも解決しなくて、ますます思考がこんがらがった。

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