冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 優陽はかわいいなと思った。そんな彼女に対し、藍斗さんのように『好きになるな』という男がいるのだとしたら、ぶちのめしてやりたい。

 物騒な考えが頭をよぎり、熱くなりかけた頭を冷やそうと、持っていたグラスの中の溶けかけた氷を口に含んだ。

 いつ、優陽はそんな寂しい恋愛をしたのだろう。

 こんなことならもっと早く彼女とこういう話をするのだった。

 そうしたら傷つく彼女を慰め、励ましてあげられたのに。

「好き合う関係じゃないってわかってるんだから、優しくしないでくれたらいいのに」

 優陽の言葉に深くうなずく。

「その人、優しかったの?」

「うん。……すごくいい人」

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