冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 私の場合は、気のあるふりをしないでほしい……だろうか。

 キスもそうだし、触れたがるのもそう。泣かせたい、壊したいと、物騒ながらも私を求める言葉だって激しい思いを感じさせる。

「なんにも心配しないで、素直に夫と幸せになれたらそれが一番なのにね……」

 心の奥底にあった願いが口をついて出てきた。

 藍斗さんとの間になんのわだかまりもなく、好きだと素直に伝えられる毎日を過ごせるようになったら、きっと私は毎日にこにこしてしまう。

 そんな日を望めないからこそ、こんなに焦がれるのだろう。

 いっそ夢でもいいから、藍斗さんの本物の妻になりたかった。

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