冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
「仕事仲間か?」
私を引き寄せ、いきなり抱き締めた藍斗さんが低い声で尋ねてくる。
なんの話かと思ったものの、すぐに同期のことだと気がついた。
「同期入社の戦友だよ。毎月、営業成績を競ってるライバルでもある」
「……そうか。ならいい」
一度は触れないと決めたらしいのに、彼は意外と私との距離を詰めたがる。
抱き締められているところを同期に見られるのは恥ずかしくて、その腕を抜け出した。
「特に会社で報告してないけど、実は結婚してまして。私の夫だよ」
ぽかんとしていた同期に藍斗さんを紹介する。
軽く会釈した藍斗さんにつられ、慌てて頭を下げたのがおかしかった。