お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 そのひと言は驚くほどしんとしたリビングに響いた。

「好きって……。いきなりなにを言ってるの」

「さっき、同僚といるのを見て改めて思った。お前がほかの男と笑っているだけで狂いそうになる。再会してからずっとそうだった、またお前が俺を好きになってくれればいいと思っていたが、これ以上待てない」

「あなたが好きになるなって言ったのに」

 指摘してから、彼が駆け引きをやめると言ったのを思い出した。

「だから私、好きにならないようにしなきゃって……」

「なってくれと言ったら、昔のように俺を受け入れてくれるか?」

 まだなにを言われているのか理解が追いついてこない。

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