冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 藍斗さんが私を好きなのだとしたら、これまでの時間はなんだったのだろう。

 でも、この言葉が本当なら納得できる部分も多い。

「どうしてあなたがキスをするのかわからなかった」

「したかったからだ」

 これ以上ないほどわかりやすい答えだ。藍斗さんにしてはいささか考えなしの発言にも聞こえるほどに。

「好きならどうして、旅行先で……しなかったの?」

 質問の途中で気恥ずかしさを覚えて曖昧に濁す。

「私はあそこでもうあなたを受け入れようと思ってた。だけど引いたのは藍斗さんだよ」

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