お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
「てっきり、もう私を好きじゃないって意味なんだと思ってた。違ったんだね」

 少し悩んでから、藍斗さんの頬に手を伸ばす。

 以前そうしたように、彼は私が触りやすいよう少し屈んで顔を寄せてきた。

「私もずっと好きだったよ。好きになっちゃいけないんだと思ったから、必死に隠してた。もし好きになったら、たとえ偽物だとしてもあなたの妻をやめなきゃいけなくなるでしょ? ……こんな関係でも一緒にいたかった」

「泣かせたのに?」

 こぼれた質問を聞いてつい笑ってしまった。

 本当に、いつまで経っても気に病んでいるらしい。

「私を笑わせてくれるのも、あなただよ」

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