冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 腰を抱く腕は力強く、今夜は離してもらえないのを嫌でも理解する。

「仕事に影響がなければいいんだろう。消えそうになったら、また何度でも新しい痕をつけてやる」

「温泉に行けなくなったら困る。この間の旅行だって大浴場に入れなかったんだから」

「俺がいるのに大浴場を選ぶのか? 隅々まで洗ってやるのに」

 こうやって、と藍斗さんが私の身体を寝間着の上から撫でた。

 実に下心でいっぱいの触れ方に身をよじると、藍斗さんは機嫌よさそうに笑って耳を甘噛みしてくる。

 このままではまた求められかねないと、その肩を押しのけた。

「ひとつだけ確認しておかなきゃいけないことがあるの。いい?」

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