お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 不覚にもうれしいと思ってしまった。その言葉だけで十分だとすら思うも、そんな簡単に終わらせていい話ではない。

「でも、見たの。藍斗さんがあのマンションに知らない女の人を連れ込むところ」

「別人じゃないのか。俺が他人を、それも女を家に入れるはず――」

 そう言いかけて、藍斗さんははっとしたように目を丸くした。

「尚美か」

 それは彼の従妹の名前だった。

 私が結婚する理由になった人物でもある。

「尚美さん? この間会った時と、あの時の女性は違う気もするけど」

「八年経っているんだから当たり前だ」

 それを言われると、たしかにそうである。

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