冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
「そう」

「……あの女のせいだったのか」

 怒りを通り越して憎しみさえ感じさせる声にぎくりとする。

「理由がわかっただけいい。誤解だ。説明が必要なら納得するまで話す」

「ううん、もう納得したから大丈夫」

 すんなりそう言えたのは、皮肉な話だけれど八年の月日があったからだと思う。

 大学生で、しかも未成年だった私も、今はアラサーに片足を突っ込みかけているところだ。

 二十六歳にもなれば社会人経験も積むし、世の中のいろいろなことを知って視野も広がる。

「電話の相手も尚美さんだったのかな。声を覚えていないからなんとも言えないけど」

「電話?」

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