冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 どうやらこんなことになったのもお前のせいだ、と言いたいようだ。

「そんなことはどうでもいい。ほかになにか言うことはないのか?」

「警察に駆け込めるのにしなかったのは、藍斗さんの情なんですよ」

 厳密に言うなら、私が穏便に済ませてほしいと言い、藍斗さんが渋々承諾したから今がある。

 それでも聞き入れてくれたのは、彼が今まで最低な親だと認識しながらも両親を切り捨てなかった情があるからだろう。

 なのに肝心の義父母がそれを理解せずにいる。

「円香、いい。言うだけ無駄だ。……尚美はどこにいる?」

 藍斗さんが尋ねたのとほぼタイミングを同じくして、廊下の奥から尚美さんが現れた。

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