お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 ここへ連れてきてくれた友人のように出会いを求めている人もいれば、私のように気の置けない友人を求めている人もいた。

 大学生特有のどんちゃん騒ぎもなく、比較的落ち着いた雰囲気で非常に居心地がいい。

 目的は違えど、いい会に招待してもらったと思いながらさまよっていると、背の高い男性にぶつかってしまった。

「すみません」

「こちらこそ。大丈夫ですか?」

 見上げた瞬間、息ができなくなった。

 どんな芸術家がどれほど完璧に彼を模写しても、整った美貌は写し取れないだろう。

 ひやりと冷たい瞳に見つめられているのに、逸らそうと思えない。

< 27 / 271 >

この作品をシェア

pagetop