冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 投げるふりだけして、そのまま歩き出し――私のもとまでやってくる。

「投げないの?」

「次に幸せになるのは円香だから」

「え?」

 どういう意味だろうと、ブーケを受け取って隣に立つ藍斗さんを見ようとした時だった。

 その場に膝をついた藍斗さんが私に向かって小箱を差し出す。

 開かれたそこに入っていたのは、銀色の指輪だった。

「結婚してくれ」

 情緒のない目的だけの短い言葉とともに、藍斗さんは私を見つめた。

 一拍置いて、集まった参列者が拍手をする。

「え? なんで? なに? どういうこと?」

「サプライズ!」

 優陽が水無月社長に寄り添って、にっこりと笑う。

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