お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
「円香(まどか)についていける相手もそういないだろうからな」

「あ、ひどい」

 彼が私の名前を呼ぶ時、いつも胸の奥がぎゅっと甘酸っぱい気持ちになる。

 使い慣れた三堂(みどう)円香という名前を特別なものに変えてくれる、魔法の声だと思った。

「お前に付き合ってやれるのは俺くらいだ。だから、俺以外の男には近づくな」

「あなたも嫉妬するの? そういうのとは無縁なのかと思ってた。いつもしれっとしてるから」

「嫉妬じゃない。恋人として当然の権利を主張しているだけだ」

 藍斗さんの唇が首筋に落ち、キスの甘さが肌の上を撫でた。

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