お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 悩んでいる間にも私を牽制する連絡は止まらず、電話どころかメールでも別れるよう言われるようになったのだ。

 さらには法的手段に訴えるという物騒な文言まで追加されるようになり、なぜ自分が訴えられるのかわからなくてどんどん不安が募った。

 こうなったら藍斗さんに直接確認を取ろうと思い立ち、何度か訪れた彼の家へ足を運んだ。

 いつもなら事前に連絡をするのに、謎の人物に追い詰められてすっかり抜けていたのが悪かったのだろう。

 三十階建てのマンションの前で見たのは、藍斗さんが見知らぬ女性を家に上げる姿だった。



* * *



 藍斗さん、と声には出さず唇を動かす。

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