お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
「そっくりさんじゃなくて、本人だったみたい」

「え……。じゃあ、筑波社長が知り合いってこと……?」

「そういうこと」

 そうだろうと思っていたけれど、そうであってほしくなかった気持ちがある。

 こんな形で再会するなんて思ってもいなかったし、そもそもなんで私に気づいたのか、わざわざ会いに来たのか、なにもかもわからなくて混乱した。

 どう説明しようか、まず説明が必要なのか、と悩んでいると、藍斗さんに手首を掴まれる。

「ちょっと」

「話がある。……お前もそうじゃないのか」

 あなたと話すことなんて今さらない。八年も前に私たちの関係は終わっている。

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