お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
「……なにを言ってるの? 私にできることなんて」

「今、従妹(いとこ)との結婚を迫られている」

 彼はこんなたちの悪い冗談を言うような人ではない。

 真剣な表情からも、私を騙してなんらかの結果を得ようとしているふうには見えなかった。

「両親も含め、外堀を埋められているところだ。親族からすれば、身内同士で関係を持ったほうが利益を貪(むさぼ)りやすいからな。だが、俺は従妹と結婚したくない。自分が築き上げてきたものを、どうして利用されなければならないのかわからないからだ」

 攻撃的な物言いから、彼が心底その結婚を嫌がっているのが伝わってくる。

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