お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 おそらくは身内に味方がいない状況なのだろう。本人がいくら拒んでも、強引に話を進められかねないような。

両親が望まない結婚に前向きだとしたら、なおさらだ。

「困っているのはわかったけど、私になにができるの? 力を貸してって言われても、あなたのご両親や親戚を説得できる立場じゃないよ」

「その立場になればいい。俺と結婚するんだ」

 はっきりと告げられ、驚きのあまりよろめく。

 咄嗟に差し出された藍斗さんの手を、思わず拒んでしまった。

「結婚なんて……。よりによって、あなたと?」

「思っているような関係にはならない。俺が望まない結婚をしないための、飾りになってくれればそれでいい」

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