お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
「もちろん見返りも用意する。俺に叶えられるものであれば、どんなものでも。手っ取り早いのは金だが、お前はそういうものを欲しがる性格じゃないだろう。だから必要なものがあれば言ってくれ」

「お金がいい」

 咄嗟にそう答えた私を、藍斗さんが驚いたように見つめ返す。

「できれば二千万。最低でも一千万は欲しい」

 それさえれば、実家の借金を返済する目途が立つ。

 大金を要求するのは気が引けるけれど、両親を心労から救うためのチャンスを逃すわけにはいかない。

「お前に金の話をされるとはな。なにか困っていることでも?」

 藍斗さんが訝しげに尋ねてくる。

 その問いには首を横に振って答えた。

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