お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
「そんなにいらない!」

 思わず声をあげると、藍斗さんがくっと喉を鳴らして笑う。

「お前との結婚にはそれだけの価値がある。安すぎるくらいだ」

「二千万でいいの。そんなにもらっても困るよ」

「だったら一億にしようか」

「どうして金額が上がってるの……!」

 このまま拒んだら、もしかして生涯年収くらいぽんと出てきてしまうんじゃないだろうか。

 恐ろしくなっていると、藍斗さんに左手を引っ張られた。

「自分がどんな男と結婚するのか、早めに知るべきだ。違うか?」

 今はなにもない薬指に藍斗さんの口づけが落ちる。

 ぴくりと反応した私を見て、彼は手のひらにも手首にもキスをした。

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