お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 手を引けばいいのに、甘い感触に胸が震えて動けない

「俺の妻になるからには、ありとあらゆるものを与えてやる。その代わり、俺の望む妻でいろ」

「どんな妻を望んでいるの?」

 高鳴る鼓動を悟られないよう、必死に冷静さを装いながら尋ねる。

「昔の関係を期待するな。八年前のようにお前を愛してやることはできない」

 それは、愛のない結婚を要求されるよりもつらいひと言だった。

「あなたを好きになるなって言ってるの?」

「……そうだ」

 どんな条件だって、これよりは簡単だろう。

 なにせ私は好きになるならない以前に、もう彼を愛しているのだから。

「それさえ守ってくれればいい」

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