冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 できないといえば、今も変わらず抱いているこの気持ちを認めることになる。

 彼がどんな顔をするかは知らない。でも、決して好意的なものじゃないだろう。

 別れを告げた側が、今さらどういうつもりかと思うはずだ。

 一億円という大金を軽く出せる男だと知って媚びてきたのかと、軽蔑するかもしれない。

 それになにより、これはチャンスだった。

 この気持ちさえ悟られなければ、私は両親を助けてあげられる。

 だったらもう、答えは決まっているようなものだ。

「わかった。あなたを愛さないって約束する」

 微かに藍斗さんが眉根を寄せた。

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