冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 自分が言った条件のはずなのに、気に入らないと思っているかのような。

「だから二千万円でお願い」

「五千」

「二千」

「三千は出す。それ以下なら勝手に振り込む」

 いったいどういう言い合いなのやら。

 これ以上は不毛な気がして、渋々うなずく。

「じゃあ、三千で我慢する。……そんなにいらないのに」

 藍斗さんは私のつぶやきを無視した。

「すぐに契約書を作る。婚姻届も今週中には提出したい」

「そんなに早く?」

「家も引っ越してもらう。新婚早々別居じゃ、偽装結婚だと疑われて当然だからな」

「待って、やることが多すぎるよ」

「必要な手配はこちらでする」

 よほど藍斗さんにとって切羽詰まった状況らしい。

 本当はもう少し時間が欲しかったけれど、そういうことなら従うしかなかった。
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