お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 高速を下りてさらに三十分ほど車を走らせると、広い土地の中にひと際大きい一軒家が見える。

 藍斗さんがガレージに車を止めた。降りてからこわばった身体を伸ばし、改めて外観を見る。

 義両親となる人たちのことを、私はなにも知らない。

 八年前も彼は両親の話をしなかった。彼とどういう仲なのかもわからないけれど、結婚の挨拶に行くくらいだからそれなりの関係値ではありそうだ。

 そう思ってから、結婚理由が彼の両親と従妹だったのを思い出した。

 だとすると、よい関係ではないかもしれない。

 怒号が飛び交う顔合わせになるとは思えないものの、ある程度の覚悟を決める。

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