お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 いまいち藍斗さんが強い拒否感を示す理由に納得いかないまま、リビングへと案内される。

 そこには白髪交じりの男性と、明るく髪を染めた女性がいた。

 説明されなくてもわかる。藍斗さんの父親と、従妹の尚美さんだろう。

「藍斗、結婚は尚美ちゃんとって話だったじゃないか。どうして勝手な真似をしたんだ?」

 私の紹介を始める前に、義父が藍斗さんを詰める。

 口を挟むのも違う気がして黙ることにしたものの、ひどく居心地が悪い。

「俺は結婚するなんてひと言も言っていない。勝手に三人で言っていただけだ」

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