お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 たしかにいきなり初対面の相手と結婚しました、なんて言ってもすぐに偽装結婚だと気づかれるから、ある程度脚色は必要だろう。

 それならそれで事前に共有してくれればいいのにと思わないでもない。

「まったく興味がなさそうだが、一応紹介しておく。妻の円香だ。以前から交際していたが、この度プロポーズした。以上」

 それだけ言って、藍斗さんは私を振り返った。

「帰るぞ」

「えっ」

 たしかに結婚報告だけをすると言っていたけれど、いくらなんでもこれはない。

 それだけのために一時間半もかけてくるのは、どう考えてもおかしいだろう。

「もう帰るの? まだ全然お話をしていないのに」

< 71 / 271 >

この作品をシェア

pagetop