お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです

 痛いところを突かれたかのように、どちらも目を泳がせている。

 代わりに尚美さんが席を立ち、藍斗さんのもとに近づいてきた。

「そんな怖い言い方をしなくたっていいじゃない。それに、お金の話だって大事なことでしょ? これからどうしていくのか、ちゃんと決めないと」

「それをどうしてお前が言うんだ。俺の身内でもないのに」

 藍斗さんは尚美さんに対しても辛辣だった。

 私のほうがどきどきして、ますます居心地の悪さを覚える。

「親戚は身内に含まれるでしょ。それに」

 尚美さんの視線が私に移った。そしてふっと鼻で笑われる。

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