お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです

　好意的な笑みではない。宣戦布告のための、攻撃的な笑顔だ。

「どういう事情で藍斗の結婚を引き受けたか知らないけど、赤の他人がずかずか入り込んできていいと思ってるの？　自分が間女だって自覚ある？　藍斗さんだってどうかしてるわ。あなたみたいなぱっとしない女にプロポーズするなんて。仕事のしすぎでおかしくなったんじゃないの？」

　驚いたことに、彼の両親はこの物言いを止めようとしなかった。

　先ほどから感じていた妙な気持ち悪さがじわじわと背中を這い上がってくる。

　藍斗さんのことまで言われて黙っているのも癪だと思ってしまい、つい口を開いた。