お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 舐められたままでいるのは嫌だけど、かといって徹底的に言い負かして叩き潰すような真似はしたくない。

 彼女の立場からすると、たしかに私は結婚相手を奪った間女に見えるのも理解できてしまうし。

「悪かった。だが、説明はもう済ませたつもりでいる。いくら言ったところで聞く気がない相手に、何度も会話を試みる理由があるか?」

「それでも、話し合いが必要ならすべきだと思う」

 うんうん、とうなずいているのは彼の両親だ。

 よほど藍斗さんとお金の話をしたいらしい。

 藍斗さんもそんなふたりの仕草を見たのか、尚美さんを軽く睨んでから黙らせ、両親に目を向けた。

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