お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 こっちに話を振るのはやめてほしい、と思いつつ、藍斗さんの反応はたしかめずに答える。

「すみません。仕事があるのでこちらに住むわけにはいかないんです」

「仕事!? どうして? 藍斗と結婚したなら、お金の心配は必要ないじゃない」

 当たり前のように、そしてなんの悪意もなくさらりと言ったのを聞き、背筋がぞわりとした。

 義父もおとなしく聞いているし、きっと同じ考えなのだろう。

 彼らは自分の息子のことをなんだと思っているのだろうか。

「やっぱりこんなよくわからない人より、私にしたほうがいい。お義母さんたちの面倒だってそばで見られるし、どういう人間か知ってて不安もないでしょ?」

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