お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 勝ち誇ったように言う尚美さんの言葉にはとげがあった。

 遠回しに私を『どういう人間かわからない不安な相手』と言っているのだ。

 挑発しているつもりなのかそうでないのかはわからないものの、激化しそうな気がして今度は黙っておく。

 きっとさっきの件ではっきり敵だと認識されたのだろう。おとなげなく反論してしまった自分を反省した。

「円香のことなら、お前よりも俺のほうがよく知っている」

 この場だけの言葉かもしれないとわかっているのに、藍斗さんの反論がうれしい。

「知ってるって、どうせ大したことじゃないんでしょ」

< 81 / 271 >

この作品をシェア

pagetop