お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
「そうよ。同居の話もちょっと急かしすぎちゃったわね。そのうちゆっくり円香さんと話すから、そういう考え方もあるんだなってくらいで覚えておいて。きっと藍斗にとってもいい話よ」

 尚美さんはまだ言い足りない様子だったけれど、義両親から無言で『もう喋らないでくれ』という視線を向けられて顔をしかめただけに留まった。

 ほっとしたのも束の間、敵対を通り越して憎悪に満ちた目を向けられ、無意識に足を引く。

 そんな私の腰を藍斗さんがさりげなく抱いた。

 突然の感触にどきりとするも、そのまま廊下へ行くよう促される。

「帰るぞ、円香」

「……うん」

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