お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 さっさと歩けという意思を腰に添えられた手から感じながら、義両親と尚美さんと振り返った。

 なにかに期待するような、それでいて失望したような義両親の眼差し。そして私を絶対に許さないとでも言いたげな尚美さんの眼差し。

 どちらも受け止めるには心が疲弊しそうで、振り返ったことを後悔した。



 車に戻ると、藍斗さんはすぐに発進させた。

 一刻も早くこの場を離れたいという思いを感じ、今はなぜ彼が実家に拒否反応を示すのか共感する。

「ひとまず結婚は認められたって思って平気そう?」

「ああ」

 黙ったままの藍斗さんに話しかけると、返事が返ってくる。

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