お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
「尚美と結婚させたがっていたのも、親戚連中と結託しているからだ。身内同士で繋がれば、それだけ俺の資産を自由にできると思っているんだろう。もちろん、尚美本人もおこぼれにあずかるつもりでいる。同居の件もやたらと乗り気だっただろう。今の家だって新しく建てたものなのに、ほかにも新しい家が欲しいらしい。奴らの欲には際限がない。うんざりだ」

 こんなふうに『集(たか)られる』のは初めてじゃないのだと、心底不快そうな口調が語る。

 彼が自分の資産を分け与えたくないと思うような人なら、私にぽんと大金を支払おうとしない。

 それに私は、彼がそういうタイプの人間ではないと知っている。

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