お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 八年前だって、付き合っている間はなにかとプレゼントをしたがったり、大学生の私には目もくらむような価格帯の店に連れて行きたがったり、こっちが困るくらい尽くし癖があった。

 基本的に身内には非常に甘い人だと身をもって知っているから、そんな彼が忌避感を示す〝家族〟に対して私も否定的になる。

 最初にいい人じゃないかと思っていたのは間違いだろう。

 藍斗さんに悪意があってやっているわけではないだろうが、それが余計に悪質だ。

 無自覚にひとりの人間を財布として見ているのだから恐ろしい。しかも彼らはその〝財布〟を自由に扱うために、強引な結婚を進めようとしていたのだ。

< 90 / 271 >

この作品をシェア

pagetop