お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 なぜそんなにも嫌う相手と、わざわざ直接顔合わせをすると決めたのか、やっと理由がわかった。

「私のせいで余計に面倒をかけてごめんなさい」

「気にするな。本当に結婚相手がいるんだと見せたほうが、あいつらには効果的だっただろう。現に尚美はお前が気に入らないようだった」

「途中で笑ってたでしょ」

「悪かった。言い返すと思わなくてな」

 ちら、と運転席の藍斗さんを見ると、口もとが緩んでいる。

「お前はおとなしそうな割に、突然爆発するから目を離せない。昔もそうだった」

 過去を匂わされてどきりとするも、深い意味はないのだと自分に言い聞かせた。

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