お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 取引先の顔と名前を一致させるのだって、百人単位との懇親会があるからと顔と名前だけでなく、所属する会社や役職、懇親会の参加者に配られたシートに記載された趣味や好物まで、事前に苦戦しながら頭に入れていた。

 私にクイズを出してほしいと言い、付き合ってふたりで全部記憶したから覚えている。

 彼がそういう表に出ない努力をしていると知っているから、横からその成果をかすめ取ろうとする義両親と尚美さんに嫌悪感が沸くのかもしれない。

 それは藍斗さんのものであってあなたたちのものではないのだと、もしまた会う機会があったら言ってしまいそうだ。

< 96 / 271 >

この作品をシェア

pagetop