お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです

「そういうのはいいから。ほら、リビングに行こ」

 藍斗さんをちらっと振り返り、軽く頭を下げておく。

 彼はおろおろする母を見ても気にしなかったようで、苦笑しながら靴を脱いだ。

 リビングへ向かった後、完全に混乱している母を落ち着かせてから、なぜか私が両親と藍斗さんのお茶を用意した。

 今日はお客さんのつもりだったのに、予想外の展開だ。

「改めて。大学時代に付き合ってた藍斗さんっていうのがこの人。偶然再会して、結婚することになりました」

 両親に向かって説明し、藍斗さんを見る。

「筑波藍斗です。本来は先に結婚のお許しをいただくところを、順番が前後してしまい申し訳ありません」

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