最後の平社員

拉致

拉致

北九州工場での最後の勤務。今日は携帯事業についての紹介が行われた。
ミノダ製作所では平成28年の実用化に向けての戦略である。
マグネシウムはアルミ二ウムより軽く、プラスチックより強い、電気・熱の伝導性が良い、リサイクルが可能など優れた特性を評価され、自動車部品、オートバイ部品ノートパソコンや携帯電話など、軽さが重要視されかつ強さの求められる分野で多く利用されています。当社では自動車部品やノートパソコンなどのダイカスト部品の製造を手がけている。
藤原拓也は産まれたときから30歳になるまでは実家のある熊本で暮らしていた。そして彼女がいた。彼女は心に疾患があった。この会社に入社する1年前に、熊本県は宇城市にあるショッピングセンターでデートをした際に。ちょっと目を離したすきに彼女は消息をたったのだ。まさか、北朝鮮に拉致されたのだろうか。彼女とはお爺さんが、囲碁仲間で親しかった、縁での出会い。彼女のアパートには1ヶ月過ぎても戻った形跡はなし、警察に届け出はだしている。両親は彼女が20歳の頃に別離したらしい。
平成26年3月
平社員、長友、牛田、藤原の3人は熊本工場へやって来た。熊本市の郊外に工場は位置していた。この工場では非正規社員として、派遣からブラジル二世の人達が現場の仕事の大半を占めている。長友は品質管理課、牛田は加工課。拓也は長友の下で、一応品質課勤務となった。品質課の課長には今年、本社から配属された、西野課長がいる。まだ26歳だ。早い出世であった。今日は歓迎会である。拓也は長友に課長って何か質問した。すると、長友はロッカーに向かい、ひとつの紙切れを拓也に見せた。拓也は絵とも字とも受け取れない、ただ、幼稚園の子供が書いたようなものを見せられ長友に聞いた。
「これっなんですか」
「なにをいうか、わからんのか、永田課長から、貰った」
「なんですか、サインですか」
「おまえ、顔を洗って来い」
拓也は長友が腹を立てたのが理解出来ないでいる。昼休みに、北九州工場の早苗に電話して、長友との事を相談した。
「あれは、長友さんが大事にしている。永田課長さんからのメッセージ」
「あの、意味不明な文字が」
「長友さんにとっては、宝物なのよ」
ついでに、拓也は、長友の凹んでる鼻について聞いてみた」
「なんでも、野球の試合で、ホームに突っ込んだら、鼻を骨折して、凹んだそうよ」
「今日は、呑み方でしょう、聞いてみたら」
拓也は、長友から毎朝早めに出勤して下請け会社からの部品の受け入れ検査をやるように命令され実行していた。最近、社内で風邪が流行している。品質課のメンバー。五人が犯され休んでいる。長友は野球で鍛えてるせいか、元気で1日課長を言い渡されていた。そんな時に限って、不具合が発生するのは皮肉だが、本日も嫌な予感が当たった。長友は席を立つわけにはいかない。出勤したメンバーは携帯関係。長友は決断した。
「藤原、モンダ自動車に行ってくれ」
「いきなりなんですか」
「人がいない」
拓也はまだ、品質のひの字も理解出来てない。おまけに自動車の事はあまりわからない。
部品の不良は確認出来たが。いったい、どこの部品だろうと理解出来ないでいたが、拓也は胸にしまっている。そうこうしながら、モンダ自動車に着いた。モンダ自動車には、下請けの会社の品質部が先に仕事をやっていた。拓也は、彼らを利用して、彼らに質問し、作業を指示して貰った。お礼に、仕事が終わり、たこ焼きを差し入れしたのである。
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