古本屋・忘れな草
 私が話し終わると、何故か冬月さんが目元を赤くしていた。 

「なんで……」
「君の代わりだ」
 
 感受性の豊かな人だな……と思うのと同時に、どこか満たされる気持ちがあった。

「失礼」

 冬月さんはそう言うと、こたつを抜け出して私のすぐ傍に膝をついて座った。

 冬月さんの動きを追っていると、段々と彼が近づいてきて、気づいた時には抱きしめられていた。
 
 冬月さんの体温はあまり感じられなかったけれど、心が少しだけ暖かく感じられた。

——ずっと、こうされたかった
 
 どこからか、そんな思いが湧いて出てきた。
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