古本屋・忘れな草
 冬月さんは申し訳なさそうに肩を落とした。
 
 冬月さんの私を見る表情で、なんとなくそうなんじゃないかと思った。
 
 父の会社、橘電機がホワイト企業だと思ったことはない。しかしそれでも、家では暴力を振るう父も会社では尊敬される人物であってほしかった。

「うん……。ごめんね、こんな話をしてしまって」

先に挙げた不祥事は全て出まかせだ。
思いつく限りの不祥事を言ってみたが、冬月さんが知っているだけでも検品の不正、報告書偽造、不正会計があるらしい。

「冬月さん。その不祥事について詳しく教えてください」
「……それを聞いて、君はどうするんだ」
 
 冬月さんは眉をひそめてそう聞いた。

「告発します。これに冬月さんやその他の社員へのパワハラを纏めて告発すれば、確実に橘電機は傾くと思います」
「ダメだ!それは、君が危ない」

 ガシッと肩を掴まれる。
 それでも、私の意思は変わらない。
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