古本屋・忘れな草
 病室は個室だった。
 きっと父が冬月さんの家族に口止め料も兼ねて出しているのだろう。

 病室内を進むと、『古本屋・忘れな草』で会った冬月さんよりもやせ細り、少し大人っぽい姿の冬月さんが眠っていた。
 
それを見て初めて、冬月さんの受けた傷の大きさと深さを理解した気がした。

「あら、どなた?」

 背後から声を掛けられ、振り返ると50代くらいの女性が病室の入口に立っていた。
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