古本屋・忘れな草
その足で商店街へ行くと、どこか安心感のあるアンティーク調の建物が待っていた。
カランカラン、と心地よいベルの音を鳴らしてドアを開ける。
何一つ変わっていない店内の、布団を取り払われた掘りごたつに冬月さんがいた。
——寝てる……。
本を読んでいる途中で眠ってしまったのか、傍に本が置かれていた。タイトルは『こゝろ』、作者は夏目漱石。
古本屋らしく、修繕箇所の多い年季の入った見た目だ。
穏やかそうに眠る冬月さんの寝顔は、病室で眠っている冬月さんとは比べ物にならない。
私は、いつも冬月さんがそうするように90°の位置に座った。
そうして、しばらくの間冬月さんの寝姿をただ眺めていた。
カランカラン、と心地よいベルの音を鳴らしてドアを開ける。
何一つ変わっていない店内の、布団を取り払われた掘りごたつに冬月さんがいた。
——寝てる……。
本を読んでいる途中で眠ってしまったのか、傍に本が置かれていた。タイトルは『こゝろ』、作者は夏目漱石。
古本屋らしく、修繕箇所の多い年季の入った見た目だ。
穏やかそうに眠る冬月さんの寝顔は、病室で眠っている冬月さんとは比べ物にならない。
私は、いつも冬月さんがそうするように90°の位置に座った。
そうして、しばらくの間冬月さんの寝姿をただ眺めていた。