古本屋・忘れな草
「どういうつもりだ!」
「何よ!貴方だって夜のお店ばっかり行ってるじゃない!」

 蒸し暑い夏が正念場の蝉たちの声にも負けず、両親が喧嘩する声が広い家中に響き渡る。

 怒鳴り声が自分に向けられていなければいいという話ではない。

 机の上にある大量の書類と向き合う。
 瞬さんに教えてもらった内容を元に見つけたもの。
 
 そして、瞬さんがいつか告発する用にと作っていた書類。
 
 これは橘電機の社内に未だ残されていた瞬さんの机にある、鍵付きの引き出しから取ってきたものだ。

 それから……瞬さんの手帳のコピー。
 一応の受験勉強を進めつつ、最近は専らこの作業を続けている。
 
 私がこの家から逃れない限り、瞬さんが生きるか死ぬかの選択をすることはできない。
 それなら、私が家を出ることになる卒業式の日までには告発を完了させたい。

——よし

 私は気合いを入れ直し、再び書類に目を通し始めた。

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