古本屋・忘れな草

燃ゆる秋

 告発前夜。
 夏の暑さはすっかり過ぎ去り、肌寒さを感じるようになった秋。

 私は『古本屋・忘れな草』に来ていた。
 告発の最終チェックという名目で。

 それを早々に済ませると、今日はレモンティーを出してくれた。

 瞬さんには私が何を飲みたいのか、全て分かっているらしい。
 夏休みの頃は、塾の夏期講習から帰る時に寄ると冷たい麦茶やラムネなどの飲みたいものを用意してくれた。

 瞬さんは、ずっと優しい。

——だから期待してしまう

 いつぞやの失敗から、自分に親切だからといって期待してはいけないと分かっているというのに。
 
 そんな複雑な心を知ってか知らずか瞬さんは変わらず穏やかだった。

 「君にこの本をあげる」
 
 瞬さんは帰り際にそう言って、奥から持ってきた本を渡した。
 
 タイトルは『小公女セーラ』。作者はフランシス・ホジソン・バーネット。
 
 ここに来て海外の児童文学なのか。

「紗里奈さんによく似ているんだ、セーラは」

 そう言って瞬さんは寂しそうに笑った。

——嫌な予感がした
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