古本屋・忘れな草

未来のパフェ

 2年後。

「1番さん、カンパーニュサンドイッチとコーヒーです」

 厨房にいる店長にそう声を掛けると、「あいよー」と軽快な返事が返ってきた。

 大学終わり、私は近くのカフェでアルバイトをしている。

 週4日のこのバイトは優しい店長と穏やかな仲間に囲まれた心地よい場所だ。
 
 そして親元を離れ、大学で出来た友人と充実した毎日を送っている。

「こんにちはー!」

 カランカラン、と涼やかなベルの音が鳴ると近所の高校に通う女子高生がやって来た。

「いらっしゃいませ、真紀ちゃん里菜ちゃん」
「ねえ聞いてよ紗里奈さん!あ、店長もー!」

 サンドイッチとコーヒーをカウンターに置いた店長に真紀が声を掛けた。

 私は盆の上にサンドイッチとコーヒーを載せ、窓際に座る初老の男性に持って行った。

「お待たせ致しました、カンパーニュサンドイッチとコーヒーです」
「ああ、ありがとう。いつも、どうもね」

 そう言って新聞を読んでいた初老の男性は穏やかに笑った。

「いえいえ」

 初老の男性も女子高生2人もここの常連さんだ。
 心が傷ついた時だけでなく、何もない日にもここに通ってくれている。
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