古本屋・忘れな草
「さ、厨房行きましょう。瞬さん」

 2つのいちごパックを持って倉庫の扉へ向かうと、背後から瞬さんの手が肩に触れた。

「紗里奈さん、待って」
「な、何ですか瞬さん……」
 
 振り返ると、瞬さんは真剣な表情で私を見ていた。

「あの時の返事がしたいんだけど」
「や、その……早く行かないと」

 私は逃げるように、扉のドアノブに手を掛ける。

 しかし、その手は瞬さんに制止されてしまった。

「そうやって逃げ続けて半年経ったけれど。そろそろ覚悟決めてくれないかな」

 困ったように笑う瞬さんと目が合い、思わず逸らしてしまう。
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