古本屋・忘れな草
 父は学問に厳格な人だ。
 小学生の頃から私立の学校に行かせ、私の成績が少しでも悪ければ叱り飛ばし、平気で殴る。

 昨日殴られた理由は……父が行かせたい大学の摸試判定が悪かったからだった。
 
 明確な理由がなくとも、父の機嫌が悪ければ殴られる。ご飯を抜かれる。外に出される。

 父は当然、母も社長夫人の名の下、社員たちに暴政を敷いているらしい。
 数か月前には自殺未遂をした社員がいたそうだが、上手くやって社外には漏れていない。
 
 そんな環境で、頼れる人なんて誰もいなかった。
 
 中学生の頃、思い切って担任や周りの大人にこのことを相談したことがあった。
 
 それでも返ってきた言葉は散々なものだった。
「殴るなんて昔は普通だった」
「そこらの子以上にお金をかけてもらってるんだから、むしろ感謝しなさい」
「面倒を見てもらえない子だっているんだ」
 
 悲しい思いを打ち明けても、そんな風に言われるのなら、悲しい思いに蓋をして笑うしかない。
 泣いても現実は変わらないのだから。
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