元ホストは一途に愛する

「初めまして」

「初めまして、斉木透(さいきとおる)です」


斉木と名乗った男性は上質なスーツ姿で端正な顔立ちにメガネをかけていて、知性を感じるとともに色気がダダ漏れている。
向かい合って目の前に正座したその姿勢の良さが、さらに私の緊張を煽っている気がした。


「は、初め、まして……小畑陽菜(おばたひな)です」


斉木さんの顔を直視しているのも難しく、私は正座した足が早くも痺れるのを感じながらすぐに俯いてしまう。


「やだ、陽菜ちゃん!照れるなんてかわいすぎよ?斉木くんったらもう、にこにこしちゃってるもの。二人とも一目でお互いのこと気に入ってしまったかしら」


そばで私と斉木さんのお見合いを見守っていたおトミさんが、フフフと満足そうに笑っている。


お見合いと言ってもご近所に住むおばあちゃんみたいな存在であるおトミさんに、「陽菜ちゃん、ちょっと私の知り合いの男の子に会ってくれないかしら?」と言われた軽いノリのものだった。
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